オフ-ホワイト 2022-23年秋冬 ― ヴァージル・アブローが描いた最後の旅路
オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)が2022-23年秋冬シーズンのコレクションを発表したことは、ファッション界にとって大きな出来事であった。このシーズンは特別な意味を持ち、ブランドの創設者でありクリエイティブ・ディレクターであったヴァージル・アブローへの追悼と賛辞の場となった。ヴァージルの死後、初めての本格的な発表であり、その舞台は「宇宙船地球号：想像上の経験(Spaceship Earth: an Imaginary Experience)」と題され、単なるファッションショーを超えた壮大な物語が展開された。メンズ、ウィメンズ双方のレディトゥウェアに加え、彼が初めて手掛けた「ハイファッション」ラインも発表されたことが話題を呼んだ。
メンズコレクション「Foreign Exchange」では、伝統的なテーラリングやスポーツウェア、アウトドアウェアの概念を刷新した。特に注目すべきはウエストベルト付き千鳥格子ジャケットで、ラフさと精緻さを同時に感じさせるデザインである。オフホワイト コピーレザー素材を使用したトラウザー、キャンバス素材のダウンジャケット、ニットのフットボールTシャツなど、多様な素材を組み合わせ、既成概念に挑戦した。こうした試みは、ヴァージルの革新性を如実に物語っている。
このシーズンで最も大きな注目を集めたのは、「ハイファッション」ラインのデビューである。ヴァージル自身が構想から完成まで手掛けたこのラインには、シルクタフタのモワレドレスや、フリルが印象的なプリーツドレスなど、28の新しいルックが並んだ。それらはオートクチュールとストリートカルチャーの融合であり、ヴァージルが掲げた「日常にオートクチュールを取り込む」という理念を体現している。
特に「The Falling Leaves」と名付けられたルックは、このラインを象徴する作品だ。オーガンザ製のテクニカルジャケットとプリーツスカートを組み合わせ、タイダイ柄で仕上げたこのスタイルは、スポーツウェアの軽やかさとオートクチュールの華やかさを融合させた。ヴァージルのデザイン哲学である「境界を曖昧にすること」が如実に表れている。
また「The Verg」と名付けられたルックも印象的だ。複数の層で構成されたミルフィーユ状のスカート、アルカンターラ素材のジップアップジャケット、ベースボールキャップ、スニーカー、サングラスといったアイテムを組み合わせ、ヴァージル自身が日常で愛したスタイルを反映している。これは、服そのものが日常に芸術を取り込むためのツールになることを示している。
このコレクションは、単なる洋服の発表ではなく、ヴァージル・アブローが築き上げた美学と世界観の結晶である。ウィメンズの「Seeing Red」、メンズの「Foreign Exchange」、そしてハイファッションラインは、彼の遺志を継ぎながら、オフ-ホワイトが新たなステージへと歩みを進める礎となった。ヴァージルの魂は、これらの作品を通じて永遠に生き続けるだろう。
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